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Vol.3病気と向き合い復帰を目指す
クローン病患者さんの声

格闘家 征矢貴さん格闘家 征矢貴さん

クローン病は、
もう一人の本当の自分。
病気が、本来の自分のあるべき姿へと導いてくれる。

クローン病と向き合いながら、格闘家としての復活を目指す征矢貴選手にお話を伺う連続インタビュー。第2回では、病気を抱えながらトレーニングをするための工夫や復帰への思いをお伺いしました。

1.いかに身体に
負担をかけずに
練習するか。

クローン病を発症後、治療のために1年半休養されていましたが、練習を再開されてから、発症前と比べて変わったことはありますか。

征矢さん僕はプロの格闘選手のなかでも練習量が多い方だったと思うのですが、クローン病と診断された以上、昔みたいに練習はできません。まずは身体を壊さないことが第一です。前は、いかに身体を酷使するか、みたいな練習だったのです。きつい練習をしていましたし、いかにきついトレーニングをするかが一番でした。今は、もちろんきつい練習はしますが、いかに身体に負担をかけずにきつい練習をこなすか。楽をするとかそういうことではなくて、頭を使っていかに強くなるかということを、さらに考えるようになりました。

発症前と同じことをやっていたら、たぶんまた病気が悪化していくと思うのです。病気がターニングポイントというわけではないですが、「そのままきつい練習をしても強くなれないよ」と言われているような気がして。頭を使わないと、ということは感じました。

復帰に向けたトレーニングは、量はかなりこなしましたが、時間については、今までは結構だらだらと長時間練習していることが多かったのですが、きつい練習ならきつい練習で、1時間でぱっと強度を上げて行って、あとは回復に専念するとか、そのような感じで復帰に向けたトレーニングをしていました。

2.病気になってからのほうが、食べ物のバリエーションが増えた。

クローン病は食事の制限もいろいろあると思います。日々、練習して戦う身体を作っていくための食事と両立させるために、どのような工夫をされていますか。

征矢さん健康になるための食事と強くなるための食事というのは、少し違うように見えますが、僕は意外とつながっているのではないかと思っています。今、食事に気を遣って生活していますが、以前よりも疲労の抜けが早かったりします。以前は本当に何も気にせずに好きなものを食べていた時期もあったので、その頃に比べると今のほうが回復が早いのです。そういう点では、強くなる食事と健康になる食事はつながっているのではないかと、僕は思っています。

それまでは、肉を食べる、それからサラダで、ごはん、みたいな食事を繰り返す生活だったのですが、それが食べられなくなったらどうするかとなったときに、視野が広がるというのでしょうか。じゃあ、これが食べられないのなら何を食べようかと考えたときに、食べるものが世の中にすごくいっぱいあふれているのです。病気になる前よりも、病気になった後のほうが、食材選びが楽しいですし、食べられるものを探すことも楽しいです。食べ物のバリエーションが増えました。

3.交感神経と副交感神経の切り替えを意識して、早寝早起き。

食事以外で工夫されていることはありますか。

征矢さん今は、とにかく早く寝ることです。23時前には寝て、朝7時くらいには起きるように、かなり意識をしています。昔は練習を夜遅くまでやっていて、夜に激しい運動をするので交感神経が高ぶって夜眠れないことが多くありました。若い頃、10代後半や20代前半であれば全然寝なくても練習ができたのですが、それで身体に負担がかかってしまっていたなという反省があります。今は、早寝早起き、交感神経と副交感神経のオンとオフを意識して生活しています。

4.次の復帰戦にすべてをかける。
その後のことは
復帰戦が終わってから。

クローン病の再燃、入院を経験した今、これから目標にしていることは何ですか。

征矢さん正直、復帰戦が今の目標です。とにかくこの先、あと10年頑張るぞというモチベーションではないんです。ヘルニアで腰も痛いですし、身体も結構ぼろぼろなので、あと1試合、とにかく次の復帰戦に全部かけるという気持ちでなければ、なかなか毎日全力を出せませんので、今はそれしか考えていません。将来的にこうなりたい、どうなりたいというよりは、次、とにかく1試合、復帰をして、そこから考えようというふうに、今は思っています。

征矢さんにとってのクローン病を一言で表すと何でしょうか。

征矢さんもう一人の本当の自分、でしょうか。自分が苦手としているものを食べたらやっぱり反応が出るし、身体に無理をしていたら反応が出ます。本来、人それぞれ性格も違いますし、ストレスに対応できる限度も違うと思うのですが、クローン病はそれを教えてくれる存在です。

たぶん、再燃したときは何かしら、生き方というか何かが間違っていたんじゃないかと思っています。食べ物とか、考え方とか、何か無理がたたって再燃したのかなと思うのです。それがコロナウイルスのせいだったのかはわからないのですが。だから、同じことをくり返さないようにしたいと思っています。クローン病は、僕を導いてくれるというか、正しい方へと導いてくれるのが、僕のなかの病気じゃないかと、今は思っています。

(2021年11月取材)